彼等が、あたしを奪い返そうとしている。

(…ということは、探してくれている、ってことなの…?)


動揺するあたしをよそに、名無しさんの飄々とした態度は変わらない。



「へぇ、そうなんだ」


「思ったより反応薄いな。これも予定通りか?」


「まさか。まあ、あんまり気にはしてないかな」



クスクスと名無しさんが笑う。

だけど、何故かは分からないけれど、あたしの身体に回っている腕の力が強くなった気がした。



「じゃあな、稔麿」


「うん、晋作も元気でね」



高杉さんが障子を閉め、何処かへ行った。

2人の会話を聞いていると、何だかもう二度と会わないような雰囲気だったけれど…これも計画とやらに何か関係があるのだろうか。


高杉さんが出て行った事により、部屋がシン…と静まり返る。


だけど、今はそんな事どうだってよくて。



彼等が、探してくれているかもしれない。

あたしを…だけど、何の為に?


もしかして、名無しさん達に何か告げ口したと思われているのだろうか?

そうだよね、あたしを捜すなんて…口封じの為に見つけて殺す気なのかもしれない。


百歩間違えても、あたしを心配して…とかなんてあるはずがない。


心臓が大きく拍動する。

冷や汗が何故か止まらない。



「…千春?ちょっと、大丈夫!?」



何にも期待なんてしちゃ駄目だ。

裏切られた時に、正気でいられる自信がないから。



「…どうして、泣いているの?」


「………え…?」



意味が分からず、頬に手を添えると涙が溢れていた。