だけど、あたしの必要性が無くなっていたとしても、名無しさんの計画が予め知っておけば、逃げる隙も見つかるかもしれない。


問題は、どうやって名無しさんから聞き出すかなんだけど。


(……のらりくらりかわして、本当の事話してくれなさそうなんだよね…)



「俺はもう戻るぞ、あとは頑張れよ」


「うん、ありがとう晋作。また一緒にお酒呑もうね」


「お前なぁ…。ま、お前らしくていいか」



高杉さんが苦笑いをこぼしながら、よっこらせと言いながら立ち上がる。


どうやら、出て行くみたいだけど…あたしを消さなくていいのだろうか?


桂さんの顔も見てしまったし、あたしが通報でもすれば立場が危なくなるはずなのに、2人とも危機感が足りないような気がする。


立ち上がる際、高杉さんがあたしを一瞬見てニヤリと笑ったような気がするけれど、気のせいという事にしておこう。


(……気持ち悪いし…)


高杉さんが障子に手を掛けると、何かを思い出したかのように、クルリと後ろに振り向いた。



「あ、1つ言い忘れていた事がある」


「何?」


「稔麿、気をつけろよ。新撰組が動き出しているぞ」


「そんなこと知ってるよ、でも──」



ふと、高杉さんはあたしを見てニヤリと笑う。

…正直、気持ち悪いし鬱陶しい。


ため息をつきかけたその時、高杉さんが信じられない言葉を口にした。



「違う、嬢ちゃんを本気で奪い返そうとしてんぞ。桂に聞いた情報だから間違いない」


「え……」



その言葉に、心臓がドクンと大きく拍動した。