(……名無しさんに限って、それはない、か)
実際、名無しさんが引っ張ってくれたおかげで、高杉さんから逃れることが出来たんだけど…、お礼を言いたくはない。
とりあえず、今は…。
「……名無しさん、いい加減離して下さい」
「嫌だ。千春、抱き心地いいし」
名無しさんから脱出しなきゃ。
高杉さんのときと同様、結構本気で抵抗しているのに、全然ビクともしない。
やっぱり、これが男女の力の差なの…?
「っごほっ!あぁー…笑った笑った」
鳥肌がたちそうなのを必死で我慢していると、大笑いしていた高杉さんが、ようやく笑い終わったみたい。
「お前、本当にこの嬢ちゃんを好いてるんだな」
遊びだと思ってたぜ、と高杉さんは言う。
(…え、遊びじゃないの?)
口には出さないけれど、疑問が残る。
「当たり前でしょ。千春、面白いしね」
興味が尽きないんだ、と名無しさんがクスリと笑う。
…あんなふざけた言葉、信じられるわけがない。
人をおちょくって、その反応を楽しんでいる最低な言葉を吐きまくる名無しさん。
名無しさんがあたしに近付いてくるのは、あたしを利用して、何か他の目的があるのだろう。
でも、絶対に協力なんてしないわ。
どういった目的なのか見当もつかないけれど、彼等に少なからず被害は出てくる。
(……こんなことになるなら、もっと日本史を勉強しておけばよかった)
なんて、後悔しても遅いけれど。
「嬢ちゃんも満更でもなさそうだしなぁ。くくっ、この場に桂の野郎もいたらもっと面白かったろうな」
「……冗談でも吐き気がするので、今の言葉撤回して下さい」
「っとにおっかねぇなぁ。女はもっと和やかさも大事だぜ?」
余計なお世話です、と言おうとしてやめた。
どうせ高杉さんも名無しさんも、あたしの反応を見て楽しんでいるだけなんだから。

