どうして、あたしは〈こう〉なんだろうか。
ただ、人並みに幸せになりたいだけなのに……。
はぁー…っとため息を吐いていると、部屋の障子が静かに開き、名無しさんが入ってきた。
「おはよー、お嬢さん。起きてたんだ?寝顔を拝見しようと思ったのになぁ」
「………」
「え、無視?酷いなー」
顔も合わさず体育座りをしていると、あたしの隣にストン、と腰を下ろした。
だけど、いつもの飄々とした声で話しかけてくる事はなく、本当に静かに隣に座っているだけ。
(……一体どうしたのだろうか…?)
用が無いのであれば、出ていってほしいな、なんて思っていると、名無しさんがやっと口を開いた。
「…そんなに、僕達と此処にいるのは嫌?」
「…………………」
名無しさんの言いたい意図が分からず、今日初めて名無しさんの方を向く。
名無しさんは珍しく含み笑いじゃなくて、困ったような苦笑いで、言葉を続けた。
「お嬢さん、今…凄く泣きそうな顔しているからさ」
「……………………は?」
あたしが?
泣きそう……?
名無しさん、頭だけじゃなくて目も可笑しくなってるような気がする。
泣く、なんて事はしないわ。
惨めだし。
解決策にはならないし。
(……それに、全部あたしの自業自得なのだから)
「………目の錯覚です」
「そうは見えないけど。…お嬢さんは、僕が嫌い?」
「……はい」
即答するなんて酷い、と名無しさんは笑っているけれど、何だか今は全てがどうでもいい。
本当、心を少しでも開くんじゃなかった…。
そうしなければ、こんなにも苦しい思いをしなくてすんだのに。

