一体どうしたのだろうか?
僕の考えに、何か変な所でもあったのだろうか?
(…いや、名無しさんという人物が吉田であるならば、特におかしな点もない筈…)
一君が、静かな声で話し出す。
「…………総司。あんたの予想は、確かにこの状況に的を得ている。…だが、神崎は頭のいい女だ。
……そう簡単に、自分に不利益な事を吉田に暴露したりするだろうか?」
「…確かに。そう言われればそうですね」
千春さんは、僕達にさえ秘密を隠し通そうとしていた。
最初は、かなり警戒心が強くよそよそしい。
そんな千春さんが、よく知らない吉田達なんかに秘密を打ち明けたり──
「──てめぇら、馬鹿か」
「…土方さん?」
僕達の考えを打ち切るように、土方さんが途中で話に割り込んできた。
(…馬鹿、とはどう意味なのでしょうか?)
少し、苛々とする。
僕、今凄く大事な話し合いをしていると思うんですけど。
土方さんは、僕のこの黒い感情を受け流しつつ、話し出していく。
「確かに、神崎は頭がいい…が、それだけだ」
「土方さん、どういう意味ですか?」
「だから、あいつは女だろうが。
んなもん、いくら頭よくたってな、強引な手段に出られたら太刀打ちできる筈ねぇだろ」
土方さんは少し苛ついたように言い切る。
(…そうだ、土方さんの言う通りだ)
千春さんは、いくら弱さを表情に出さなくたって、1人のか弱い女性(ヒト)だ。
ただ、不思議な程に表情が少ない、というだけで。

