腕と胴体にキツく縛ってあった縄を解かれて、圧迫感がなくなる。
あたしはゆっくりと体を起こして、名無しさん達と距離をとった。
(……とはいえ、二~三人くらいのスペースしかないけれど)
「さ、お嬢さん。コレについて説明してくれる?」
ヒラヒラ、と名無しさんが携帯を揺らす。
(……説明、か…)
どんな嘘をつけばいいのだろうか。
名無しさん達は江戸時代の人間。
馬鹿正直に、全部説明なんてしなくてもいい。
「……それは…、携帯という物です」
「ケータイ?」
不思議そうに名無しさん達がリピートする。
高杉さんや桂さんも、聞いた事のない名前によく意味が分からず、思案しているみたいだ。
「……この携帯には、写真と時計の機能があるだけです」
「時計…!?そんな、まさか…!」
あたしの言葉に、桂さんが狼狽している。
(……そういえば、この時代って…時計は高価な物じゃなかったっけ…?)
ちょっぴり、後悔。
でも、まぁいいわ。
とりあえず、今は携帯さえ無事に返ってきてくれたら……。
「ふぅん、すごいね」
名無しさんが、あまり興味なさげに呟いた。
どうしてだろう。
何か、嫌な予感がする。
「で?」
「……はい?」
「他には?」
(……何となく、名無しさんが聞きたい事は予測できる)
でも、予測が当たって欲しくなくて、懐の中にある扇子を握った。
「どうして、お嬢さんがそんな物を持っているの?」
どうして、って聞かれても…。
答える事が出来ずに、押し黙ってしまう。
どういうふうに答えるのが、一番ベストなんだろうか。

