お母様みたいに平気な顔で、人の大切な物を奪っていく。
まるで、嘲笑うかのように。
「………そんな物、名無しさん達にとって利用価値はありません。…さっさと返して下さい」
「どうしてお嬢さんが決めるのさ?君の指図は受けないよ」
「……名無しさん達が使いこなせる物ではありません」
「…じゃあ、コレは一体、どんな方法で、どういう根拠に基づいて使用するの?」
(……ああ、だんだん腹が立ってきた…)
携帯の使用方法?
そんなの、言うわけないじゃない。
だけど、もし、言ったら名無しさん達の気を逸らす事は出来るかしら?
手と胴体にキツく縄が巻かれて痛い。
もしかしたら、これを条件に縄を解いてくれるかもしれない…。
「……じゃあ、縄を解いて下さい」
情報が欲しかったら、縄を解け。
…そんな理由で、名無しさんが動くとは思わないけれど、やってみるしかない。
だけど、案外…、
「えぇー、んー…いいよ」
あっさりと、了承して貰えた。
え…、と意外だなって思っていると、黙っていないのは、大小の男達。
「おいおい、いいのか?この嬢ちゃん、得体が知れねぇんだろ?」
「そうだぞ、稔麿。せめて正体が判明するまでは、拘束しておいた方がいい。…たとえ、女だとしても」
高杉さんと桂さんが、名無しさんに忠告する。
(……せっかく、名無しさんが乗り気なのに…)
邪魔をしないでほしい、というのがあたしの本音。
名無しさんの気が変わったらどうしよう…、と考えていると、
「ま、大丈夫だって」
名無しさんの飄々とした声とともに、スルッと縄が解かれた。

