どうして…!?
あたし、確かに自分の懐に入れていた筈なのに…!
余程あたしが焦った表情をしているのか、名無しさんは嫌な含み笑いをする。
「ふふ、すごく焦っているね。お嬢さんにとっては、大事な物なのかい?」
「……返して下さい」
(……やっぱり、常に持ち歩くんじゃなかった…)
なんて、後悔してももう遅い。
名無しさんを睨んでも、ちっとも効果は無いようで、あたしの携帯を開いたり閉じたりしている。
どうしよう、と焦って考えていると、今まで静かだった二人が騒ぎだした。
「稔麿!なんだ、その珍妙な物!?俺にも貸してくれっ!」
「馬鹿、やめておけ。爆発するかもしれんぞ!?」
「大丈夫だよ、桂さん。中身も見たけど、武器とかの類いではなさそうだから」
名無しさんの言葉に耳を傾ける。
(……とうにかして、携帯を取り返さないと…)
「だが、万が一の事態を考えれば…」
「おぉ、すげぇ!箱の中の絵が光ってる…!」
あれは、お祖母様から貰った唯一の物。
あんな奴らの、汚い手で触られたくない…!
縄が解けないかと、後ろに回っている手首を懸命に動かすが、やっぱり縄は緩んでくれない。
「そんなに大事な物なの?」
「……返して下さい」
「それはお嬢さんの態度次第。利用価値があるなら、ちゃんと有効活用しないとね?」
最低だわ、こんな人。
まるで、お母様みたい。

