横にフイッと向けていた顔を、名無しさんに向ける。
何者、ってどういう事?
あたしは、ただの一般市民だ。……この時代では。
「政治に興味が無いとか言いつつ、まるで全てを知ってるような言い方は何?」
「……」
「お嬢さん、何かを隠してるでしょ?」
ああ、どうして。
どうしてこうも鋭いのかしら。
あたしと名無しさんの間で、静かな睨み合いが続く。
(…こんな、危機的状況は初めて)
どうやって、回避すればいいのだろうか。
逃げようにも、体を縄で縛られては万が一起き上がる事は出来ても、逃げられない。
(……誰か、助けて…)
そう思ったけれど、ふと考えて止めた。
なんて、無駄な足掻きなのだろうか。
醜い。……自分が。
はぁ、と大きなため息を吐くと、ドタドタ、と部屋の外で大きな足音が聞こえる。
(…え…、もしかして…)
足音がピタリと止まったと思えば、部屋の障子がスパンッと豪快に開いた。
あたしと名無しさんの、静かな沈黙を破ったのは──、
「おぉ、コイツか!新撰組の女ってのは」
「…まさか、本当に連れて来るとは…。大丈夫なのか?」
──彼等、ではなかった。
そこに立っていたのは、顔も知らない、二人の男だった。

