「おい、女。名はなんだ?」
土方さんが、偉そうにあたしの名前を聞く。
さすが鬼の副長、威圧感が半端ない。
「…神崎千春」
「千春君だね?私は、新撰組局長、近藤勇だ」
「新撰組副長、土方歳三だ」
案外あっさりと名前を名乗られて、少し驚く。
もし、あたしが長州の間者だったら顔が割れているのに。
沖田さんもそうだけど、もう少し警戒しなきゃ。
「千春君、君は本当に、長州の間者じゃないんだね?」
近藤さんが確認するように、あたしに尋ねる。
それに答えるように目を真っ直ぐ見て、頷く。
「確か、帰る場所がないっていうのは、本当かい?」
「…はい」
「そうか…」
近藤さんが黙り込む。
きっと、あたしの処遇を考えているのだろう。

