──怖い、と素直に思った。
だけど、不思議な事に死に対しての恐怖心はあんまり無い。
何故だか、今の名無しさんはあたしを殺さない気がするからだ。
「……こんな事して、あたしを人質にしたつもりですか?」
「だとしたら?その綺麗な顔が、少しは恐怖に歪む?」
「………まさか。ただの女中に、人質なんて大層な役、務めることが出来る思いますか?」
あたしの返答に、名無しさんは含み笑いで応じていた。
名無しさんの考えている事が、全くわからない。
けど、その代わり1つだけ分かった事がある。
あたしは、人質になってしまい、彼等に迷惑をかけているんだ。
少しでも、信じてくれた彼等に迷惑なんてかけたくないのに。
(………ああ、またあたしの存在価値が無くなる…)
「お嬢さん、早くコッチに来なよ。新撰組なんて、所詮幕府の犬。徳川幕府はもうすぐ終わる」
「……嫌です。あたしは政治に興味はありません。あんな、只の地位目当てな馬鹿達なんて」
お母様も、そう。
金と地位に溺れ、結局は朽ち果てた。
あんな馬鹿な大人に、あたしはなりなくないの。
あんな、人の命さえも馬鹿にする奴等なんて──!
名無しさんが、あたしの横に腰掛ける。
体を動かせないけれど、顔だけはフイッと横に向けた。
「…なんか、お嬢さんって本当に何者?」
「………は?」
名無しさん、頭可笑しくなった?
いや、あたしには好都合だけど…。

