静かな怒りを醸しだしながら、一君が近付いてきた。
いつも涼しげな目が、怒りによって少し吊り上がっている。
(一君がこんなに怒るところ…、久しぶりに見た気がする)
「……総司、今は急いでも奴等の思う壺だ。状況を読め」
「は、はい」
「……副長、貴方まで総司と一緒に騒いでどうするんですか」
「…すまねぇ」
一君に一喝され、僕の中で騒いでいた苛立ちが少し治まる。
きっと、一君は僕達が言い合いになっているのを予想して、仲裁に来てくれたんだろう。
(…そうだ、焦って闇雲に捜しても、ただ時間が無駄になるだけ…ですね)
ふぅ、と千春さんみたいに軽くため息を吐くと、少し気が楽になる。
だから、千春さんはため息が多いのだろうか…?
「ありがとうございます、一君」
「……別に、礼を言われる事はしていない」
ふと、一君の手に視線がいく。
その手は、何かを我慢するように強く、強く握りしめられていた。
「山崎が帰ってくるまで、俺達は待機だ。それまで、出来る限りの作戦を立てるぞ」
「「はい」」
─ギリ…!と唇を噛み締める。
自分の不甲斐なさに、一番腹がたつ。
まるで刀が、只の飾りのようにも見えてきた。
早く、千春さんの安否を確かめたい。
(千春さん、どうかご無事で…!)
そう願う事しか、僕には出来なかった。

