「総司!」
「…何ですか、土方さん。顔が般若みたいになっていますよ」
「うっせぇ!」
道場で稽古した後、水を飲みたくて井戸へ向かう途中に、前方に土方さんがいた。
から、引き返して別の道から行こうと思ったのに…。
「どうして追いかけて来るんですか。面倒くさい人ですね」
「てめぇ…、一発殴らせろ」
「嫌ですよ」
土方さんをあしらっていれば、いつも殴られそうになる。
だけど、揉め事以外で殴られた事は不思議とない。
あーあ、稽古で疲れているのに、どうして土方さんの相手なんかしなきゃいけないのだろう。
手拭いで汗を拭いつつ、井戸へ向かう足は止めない。
(…そういえば)
千春さん、今日は夕ご飯の買い出しへ行くって言ってましたっけ。
もう、帰って来ているのでしょうか?
「総司、お前何処向かってんだよ?」
「何処、って。井戸ですよ?僕、さっきまで稽古していたので、喉渇いているんです」
土方さんが話し掛けてくるので、取り敢えず適当に返事をする。
そして、着いてきたのは土方さんの方なのに。
「あ?先に言え、馬鹿野郎!」
なんて言って、勝手に怒りだす。
嫌味を言おうかと思ったけど、土方さんが仕事の話以外で近付いて来る事はない。
(……何か重要な任務の話なのですかね?)
「で?要件は何ですか?」
「…お前に聞きたい事がある」
ピタリ、と進めていた足を止める。
そして、クルリと振り返れば、いつになく真剣な表情をしている土方さんがいた。

