なんで土方さんが、変な質問してくるかは分からんけど、何か切羽つまってるような…そんな気がすんねん。
「千春ちゃんは、いっつも同じお店には行きませんよ」
「…どういう事だ?」
土方さんの声が低くなる。
威圧感は無いけど、やっぱ分からんわ。何でこんな質問してくんのか。
「えーと…確か、『名無しさんから、姿を欺く為です』って、言ってたような…」
「…名無し、か」
「はい。背がめっちゃ高くって、左目の下に黒子がある人です」
そうそう、あのちょっと嫌味な男の人が嫌いって言ってたっけ、千春ちゃんは。
──『……あんな常識と名前が無い人なんて、放っておけばいいんです』
あん時、千春ちゃんはめっちゃ怖い顔してた。
笑った顔は一回も見た事あらへんけど、怒った顔は一回だけ見た事ある。
驚いたけど、変な話、
(…ちょっとだけ、嬉しかったな、なんてな)
「そうか、わかった。仕事の邪魔をして悪かったな」
「いえ、気にせんといて下さい。……そういえば、千春ちゃんえらい遅いですよね」
何気なく、土方さんに話をふる。
夕日が傾いてきてるし。
もうじき、夕刻にもなる。
それに、晩ご飯の用意もあんのになー。
千春ちゃんが、時間に遅れる事なんて滅多に無いのにな、と思いつつ新しい羽織を手に取る。
「…土方さん?」
土方さんの様子が、変。
腕組んで、これでもか!ってくらい眉間に皺寄せて。
「……お前にも、一応伝えておくか」
その時、土方さんから信じられへん言葉が聞こえてきた。
(…う、嘘や。絶対、何かの間違いや…!)
そんな、まさか…、
「…神崎が、消えた。現在消息を追っているところだ」
千春ちゃんが、消えたなんて…。

