「…千春ちゃん、えらい遅いなぁ」
隊士達の浅葱色の羽織を畳みながら思う。
やっぱり、うちも一緒に夕ご飯の買い出しに行けば良かったなぁ、と。
うちの名は、雪。
苗字はもちろん無いし、雪って名前も、うちのほんまの名前かもわからへん。
何でかっちゅーと、うちには親がおらんから。
ただ、物心つく頃には、母ちゃんと呼ばれる人が傍におって、
『雪は、ほんまに阿呆やね』
って笑って、うちをギュッと抱きしめてくれたんやっけ。
(…懐かしいなぁ)
つい、ほっぺが緩み、へらっと笑ってしまう。
残りの隊士の羽織も、やっとこさ少ななってきたし、千春ちゃんが帰って来る前に終わらして、
んで、めっちゃ褒めて貰お。
…うちは阿呆やから、まだ千春ちゃんに迷惑しかかけてへんしな。
一度大きく伸びをすると、部屋の障子に影がかかる。
誰やろ?と思っていると、障子がスッと動いた。
「おい、雪。神崎は何処だ?」
「千春ちゃん?千春ちゃんは、夕ご飯の買い出しやけど…、どうしたんですか?土方さん」
目の前にいたのは、土方さん。
なんか、いつもより眉間に皺があるような、ないような…。
取り敢えず、羽織を畳む手を止めて背筋を伸ばす。
(あ、もしかして…!)
「いや、神崎が─」
「─また、外出禁止なんて馬鹿な事考えてはるんですか!?」
「……は?」
土方さん、また千春ちゃんを外出禁止にしようとしてんの…!?
千春ちゃんは、悪い事なんか何にもしてないのに!

