長い沈黙。
ピリピリとした空気。
さっきから何度も肌で感じとっているのに、全然慣れない。
というか、慣れる気がしない。
あたしはつい、下を向く。
…気持ちを落ち着かせる為に。
──…ジャリ…。
(……大丈夫、大丈夫よ)
極度の緊張の限界か、冷や汗が、さっきから止まらない。
心臓の鼓動も、リズムが狂ってバラバラで、心なしか息が苦しい。
「………」
(……やっぱり、名無しさんから洩れている殺気?が原因なのかしら)
──…ジャリ…。
威圧感が、半端ない。
今更、逃げようとも思わないし、逃げ切れる自信もない。
なら、他にどうすればいいのだろう。
──ずっと、この状況を打開しようと、下を向いて考えていたのがいけなかったんだ。
──…ジャリ…。
「なーんだ、僕の事知ってたんだ?……本当に、つまらない」
名無しさんの声が聞こえたから、急いで目線を上に向ける。
「……!?」
でも、さっきまでいたはずの、名無しさんの姿は見当たらない。
(え…、どこへ消えたの…?)
徐々に、自分自身が冷静では無くなっていく。
キョロキョロ、と辺りを見回しても、名無しさんはいない。
──すると、背後から、
「お嬢さんを、すんなりとコッチに引き込めると思ったのになぁ」
「─っ…」
名無しさんの、飄々とした声が背後から、聞こえた。
ドンッ、と首の後ろに鈍い鈍痛が襲い、意識が朦朧とする。
(…ああ、駄目。…意識、が…)
「悪く思わないでね、お嬢さん」
その言葉を最後に、あたしの意識はぷっつりと途切れた。
何故か、名無しさんがいつもの含み笑いではなく、
今にも、泣き出しそうな表情になっていたのは、何故なのだろうか…。

