あたしはもう後には退けない。
それに、平成の時代では一度死んでいる身だし、彼等の為なら、この命だって…惜しくはないわ。
「……交渉決裂、とはどういう意味ですか?あたしは、ただ質問をしていただけです」
「僕の名は大層な名前だからね。そう簡単には教えてあげられないなあ」
「………では、質問を変えさせていただきます」
名無しさんが口を割らないようなので、質問を変えることにする。
今思えば、最初から気味が悪い人だと思ってた。
わざとらしく執拗に声をかけてきたり。
わざとあたしを怒らしたり。
わざと、ストーカーみたいに着いてきたり。
そうよ、土方さんにだって聞かれたわ。
──『ああ、お前に聞きたいことがある』
根拠はないけれど、変な自信だってあるわ。
「……名無しさん」
「ん?何?お嬢──」
「──貴方の名前は、吉田稔麿…ですよね?」
聞かれたわ、土方さんに。
『──吉田稔麿という男、知ってるか?』…とね。
「……」
「……」
重い沈黙が続く。
名無しさんはピクリとも動かないし、微動だにもしない。
含み笑いを止め、何か思案しているようにも見える。
(……沈黙は肯定、と受け取っていいのかしら?)

