だからこそ、あたしは…心を開くことをせず、しっかりと鍵をしていた。
どうせ消える命ならば、彼等と馴れ合う必要なんて無い。
変に期待なんてして、裏切られた時に正気でいられる自信が無いから。
それなのに。
あの人が、あたしの心の扉を壊し、中にある氷を溶かすから。
──『千春さんっ。甘味食べに行きましょう!』
──『自分の体をもっと大切にして下さい!』
──『これ、ほとがら撮れましたよね!?どうするんですか?』
……溶かすから、あたしにまた感情なんて芽生えたんだ。
嬉しい、悲しい。
苛々や、苦しみ。
彼等を傷つけたくない。
沖田さんの笑顔を…曇らせたくない、と思うようになってしまった。
あたしと名無しさんの間に沈黙が流れる。
ジャリ、ジャリ…。
何を思ったのか、名無しさんはあたしに一歩ずつ近づいてきた。
(……何が、目的なの…?)
「はあー…」
そして、重いため息を吐くと、ようやく口を開いた。
「あーあ、なんかつまんないな」
「………は?」
意味がわからない…。
つまらない、ってどういう事…?

