「面倒」とあたしが答えると、雪さんはあからさまに悲しそうに顔を歪めた。
『なんで〜っ!?水撒いたら涼しくなるねんで!?』
『……面倒です』
『いいやんいいやん!じゃ、うち1人で水撒きするわ!それやったらええやろ?』
雪さんが、1人で水撒き…。
扇子を扇ぐ手を止め、雪さんをチラリと見てみる。
両手を組んで、雪さんもあたしを見ていた。
(……あくまで、水撒くだけだし…これくらいなら雪さんにもできるよね?)
いや、流石にできてくれないと困る。
『……はぁ…わかりました。あたしは、ここで休んでいます』
『やった!ほな、さっそくやってくるわ!』
ニコニコと笑い、トタタッと雪さんは井戸へ向かって走っていった。
…そんなに水撒きがしたいのだろうか?
(それにしても、雪さん何やってるんだろう…?)
ゴソゴソ、と。
あたしからは雪さんの背中しか見えないけど、水を汲むのが異様に遅い気がする。
いつもなら、洗濯で水を汲むくらいなら慣れているはずなんだけど…。
な、なんだか…。
『……嫌な、予感…』
扇子をしまって、少し雪さんの様子を窺おうと思い、あたしも井戸へ向かう事にした。
それから2、3歩歩いた途端…。
『てりゃああぁあ!!!』
『っ!?』
うわ、雪さんの馬鹿…っ!!
随分気合いが入った掛け声か聞こえた後、全身が水に濡れたのだった。

