山崎は土方が落ち着いたのを確認し、言葉を続ける。
「…神崎は吉田の事を『名無しさん』と呼び、吉田は『お嬢さん』と呼んでいます。
それに、先日と今日と様子を見ていても、神崎は吉田の事を嫌悪している節があります。
恐らく、吉田が沖田さんの陰口を言ってからでしょう」
「…総司の?」
「はい。滅多に感情を表に出さない神崎が、遠くから見ていてわかるくらい怒った表情をしていました。
…それに、今日の夕刻でも…吉田の前で『嫌いです』とも言っていました」
「なるほどな。だが、何故吉田は神崎にこだわる?話からすると、奴から接触してんだろ?」
まさか、あいつが未来から来た事も知らねぇ筈だ。
神崎はそう簡単に口を割るとも思えねぇしな。
もしかして、新撰組内部の情報を探る為か…?
「それはまだ定かではありませんが…。
ですが、吉田は神崎の事を少なからず知っている筈です。今日、最後に神崎の名前を言っていたので」
「そうだろうな。あいつが新撰組女中だって事は向こうも知ってても不思議じゃねぇな。
問題は──」
「神崎が未来から来た、という事ですよね?
これが発覚すれば…神崎が危険に晒されてしまう」

