うるさい、しつこい、うざい。
おまけに、常識がない上に視界に入れたくないくらい嫌い。
(…ここまで嫌いになれる名無し男も凄いのかも)
あたしは名無し男を睨みながら、肩の上の手を払う。
「……触らないで下さい」
「ちょっと、流石の僕でも傷つくんだけど」
「……もう金輪際、話し掛けないで下さい」
「えー、それは無理だね」
あたしが睨みながら言っても、全然効果がないみたい。
現に、名無し男の含み笑いは続いているし。
(早く帰らないと、晩ご飯が遅れちゃう…)
空を見上げると、夕日は沈みかけていて、段々空が黒ずんできている。
「それにさ、どうして君はそんなに──」
こうなったら、単刀直入に。
あたしの本音をぶつけてみよう。
「──はっきり言って、あたしは貴方が嫌いです」
「知ってるよ?」
……効果、なし。
きょとんとした名無し男を見て、どうやっても口で勝つ事は出来ない事を知った。

