割烹着(かっぽうぎ)を脱ぎ、誰かいないかな…と廊下を探してみても、誰もいない。
皆、まだ巡察とか稽古をやっているのかなと思い、諦めて土方さんの所へ行こうと曲がり角を曲がった瞬間。
「おわっ!?」
「きゃ…っ!?」
ドンッと誰かにぶつかり、しりもちをつく。
きっと死角になっていたせいで、互いに見えなかったんだろうけど…。
(痛っ…)
つい顔を歪めてしまうのは、しょうがないはず。
「あ、千春ちゃんじゃねぇか!すまんな!前見てなくて」
「……原田さん?」
ふとぶつかった相手を見上げると、体格のいい原田さんがいた。
あたしがボーっとしていると、原田さんが屈んで手を差し伸べてくる。
「ほらよ、掴まれ」
「…あっ…」
あたしが返事をする前に、手を掴まれてグイッと引っ張られた。
(…自分で立てるのに)
なんて思ったけど、それは言わないでおく。
「…よしっ、怪我はねぇな」
「……あ、原田さん」
「どうした?どっか痛むか?」
「…いえ。…あの、塩を買ってきてもいいですか?…もう夕刻なんですが…」
もし駄目だと言われたらどうしよう…。
今日のご飯のメインが無くなっちゃう。

