雪さんは手を頬に当て、考えるような素振りで話しかけてくる。



「もう最近暑いやん?」


「……はい」


「ほんで、千春ちゃんも外出禁止が無くなったやん?」


「……はい」


「ほな、今は休憩中やし、餡蜜食べに行かな損やと思わん!?」


「…いえ、全く」



キッパリと断ると、雪さんはショックだったようで、肩を落として落ち込んでいる。


あたしはまだこの時代のお菓子を食べた事はない。

甘い物は嫌いではないし、寧ろ好きだけど…美味しいか分からない物を進んで食べようとは思わないからだ。


だから誰かに誘われても、必ず断るし、無理矢理連れて行かれてもお茶だけ頼む事にしている。