Give Me Smile―新撰組と氷姫―






明日も、どっさりと仕事はあるのだから。


柱に身を潜めていたのをやめて、普通にスタスタと歩いていく。

あたしが歩いている音に気が付いたのか、二人がこっちを向いた。



「………すまないな」


「…いえ。遅くなってしまって、すいません」



斎藤さんは立ち上がり、湯飲みを受け取ると「……じゃあな」とだけ言って、部屋へ戻って行った。


(…あ、お盆戻しに行かないと)

なんて思っていると、沖田さんに声をかけられた。



「千春さん」



ふと、名前を呼ばれる。

あたしは視線だけを向けると、沖田さんは真剣な顔をして話しだす。



「何に悩んでいるかはわかりませんが、思い詰める前に頼って下さいね?」


「え……」



どうして、あたしが悩んでいた事がわかったのだろう。

悩み始めたのは、今日からなのに。



「さ、千春さんも早くお盆なおして、寝ましょう」


明日の隊務に支障が出てはいけませんから、と沖田さんは苦笑い。


「……はい」



そう頷いて、あたしはお盆をなおしに行く為に台所へと向かう。



…沖田さんって、

「……変な人」


あたしがポツリと呟いた独り言は、誰に聞かれることも無く、夜の静けさに消えたのであった。