ため息もいつの間にか癖になった。
まあ、それはしょうがない。
あの「家」で育ったんだもの。
携帯を開いても音楽はかけずにただ見つめていると、後ろから微かに足音を感じる。
そして…。
「───またそんな珍妙な物出しているのか」
真っ暗な闇から現れてきたのは。
「……斎藤さん?」
湯飲みを片手に持った、斎藤さんだった。
(てか、珍妙って…。前にも誰かに言われたような気がするんですけど)
「…どうした、こんな夜更けに」
「……いえ、別に。斎藤さんはどうしたんですか?」
月を眺めていた、なんて言わなくてもいいよね。
あたしが質問すれば、斎藤さんは少しの間思案した後、すんなりと答えてくれた。
「……茶、を淹れようと思っているところだ」
「…お茶、ですか。なら、あたしがお部屋までお持ちしますよ」
携帯を懐に隠しながら立ち上がると、斎藤さんの側まで歩く。

