その日の夜。
布団に包まって多分小一時間、全然眠ることが出来ない。
隣に沖田さんがいるけれど、もう完璧に寝てしまったのか、規則的な寝息が聞こえる。
(…なんだか、今日は眠れない)
上半身を起こし、音を立てないように静かに部屋を出る。
部屋を出れば、綺麗な満月が空に浮かんでいたから、思わず見惚れた。
「……よいしょ、っと」
もう少し月を眺めていたくて、廊下にゆっくりと座る。
そして懐から携帯を出し、パカッと開いてみる。
(…思い返せば、今日までいろんなことがあった)
結婚式の最中で必死の逃走。
…にも関わらず、途中でトラックに跳ねられてタイムトラベル。
気が付けば、桜の木の下で目覚め、隣には沖田さんがいて…。
(本当、どうしてあたしなんかがまだ生きているのかしら?)
気が付けば、また重いため息を吐いていた。

