あたしが妙な返答をすれば…歴史が変わってしまう。
そして、関係のない彼等の死期を早めてしまうかもしれない。
それだけは、絶対にだめだ。
どう切り抜けようかしら…。
「…吉田稔麿?誰それ?千春ちゃん知ってんの?」
「……知りません」
雪さんが尋ねてきたけど、無視して土方さんに答える。
雪さんは、あたしが未来から来たこと知らないから、とても答えにくい。
「……そうか」
土方さんは一言そう言うなり、少し沈黙する。
そして。
「わかった。んじゃ用件はそれだけだ。仕事に戻れ」
「…はい」
スクッと立ち上がり、雪さんと一緒に部屋を出る。
廊下を歩いているといつもよりひんやりとした感触が伝わる。
いつの間にか緊張していたのだろうか…危なかった。
でも、また何回か同じようなこと聞かれるんだろうな。
今日はたまたま…雪さんがいただけで…。
「千春ちゃんっ。顔怖いで〜?ほら、笑って笑って!」
「……放っておいて下さい」
ふと、考えが頭を過る。
よくよく考えたら…あたしはどうして幕末<バクマツ>に来たのだろう?
「千春ちゃん、あのなぁ──」
これから掃除をするつもりだったのに、この1日関係のないことを考えてしまい、仕事が全く手につかなかった。

