青年にとっては、ただの自己紹介だったのだろう。
だけど、あたしにとっては、大問題なわけで。
少し擦れている声で、あたしは尋ねた。
──お願い、嘘だと言って、笑って欲しい…──
「……新撰組…副長助勤筆頭の…?」
「あれ?僕のこと知っているんですか?」
その言葉を聞いた途端、頭を鈍器で殴られたような衝撃を受けた。
周りをよく見渡してみれば、道に街灯は無く、唯一道を照らしているのは、満月だけだ。
最悪の事態しか思い浮かばない。
「貴女の名前は?」
「千春…神崎千春」
「千春さんですか。いい名前ですね」

