俺の腕時計の短い針は12時を指していた。

俺は既に新宿にある仕事場で、右へ左へと忙しくテーブルを回っていた。

俺の仕事は新宿にある店で、ナンバー2ホスト“ユウマ”として働いている。

この店は日が出ている間に運営しているホストクラブ。

夜忙しい人や、キャバ嬢の子達が疲れを癒す為の場所。

「お待たせぇ。ご指名ありがとうございまーす。ユウマでーす。久しぶりだね、アリサちゃん」

胸元が大きく開いたエメラルドのドレスを着ている彼女は、俺のお客様。

「会いたかったよぉ。ずっと忙しくて会いに来れなかったの。ごめんね?」

甘い声で謝ると、俺の左腕に細い腕を絡ませ、肩に頭を乗せた。

「謝らないで。会いに来てくれただけで、俺…」

一度言葉を切り、絡ませた彼女の手を取って、その甲にキスをした。

「幸せだから」

「もうユウマったらっ。大好き」

付け睫がバサバサしている瞳に見つめられる。