気が付けば雅は泣いていた。
ポタポタと頬を伝った涙は、シーツに水玉模様を作り出す。
「だから、手首を切ったの?」
自分でも驚くほど低い声だった。
ビクッとした雅はコクリと、ぎこちなく頷いた。
「もし、この傷で雅が死んでも俺は食べたりしなかった」
その言葉に雅が、今まで伏せていた顔を上げた。
「…じゃぁ、さ。もし死んでたら、純はどうしてた?」
「死んでた。雅の隣で」
俺の即答に、雅の口が小さく動き驚きの声が漏れた。
「雅に出会うまで、俺の人生は人肉を喰らう事だけが生き甲斐だった。いつ死んでもいいって思えるぐらい、俺の人生はモノクロで血に汚れていた。でも雅と一緒に居るようになって、俺の世界も気持ちも全てが変わった。雅と明日を生きたいって思える様になったんだ」
気が付くと、子供をあやす様な優しい口調で話していた。