聞き間違いなんかではないあいつは俺を知って、俺の弱みを知ってる。 夏が始まったばかりだというのに俺は体が冷たくなっていく感覚におちいる。 「どうやら知ってるみてぇだな。」 男のわざとらしい口調に嫌悪感が募る。 「……誰だよ、あんた」 男に体を向け直し呟く。 「俺は黒沼仁(クロヌマ ジン)。黒蛇の総長をやってる。」 黒沼仁 黒蛇 噂は聞いたことがあった。 実際に野次馬に紛れて黒沼の喧嘩を遠くからだが見たこともある。 だが、奴が俺に声をかける理由がわからなかった。