「俺はちょっとインテリアの本をな」

先輩はそう言って、左手に抱えた分厚い本を見せた。


表紙には日本語でも英語でもない言語が書かれていて、読めない。


「難しそうな本ですね」

「そんなことないで?中はほとんど写真や図面ばかりや」

パラパラとめくられて、いろんなカラフルなインテリアの写真がちらほらと見えた。


「勉強熱心なんですね!」


「そーいう陽依も勉強してるやん」


先輩はそう言いながら私の向かいの席に座った。


「い、いえ…これは勉強ではなくて…宿題なんです…けど…」


先輩は自分の将来の勉強しているのに、私は宿題。

なんだか急に情けなくなってきた。


「宿題かー、あとどれぐらい残ってるん?」


「け…結構…」


私は視線を高く積み上げられたプリントにむけた。

先輩もそれを見て驚いた表情をしている。


「なんか分からん問題とかあるか?」


先輩は私の手元にあった参考書を手に取った。


「数学か?」


「先輩得意ですか?数学」


「う~ん。どれ?見せてみ?」

先輩は私の解きかけのプリントを手に取ろうと手を伸ばした。

消し跡目立つ問題を凝視する先輩。

あちゃー。

こんな問題も解けないのかって先輩あきれちゃうよ~。


「陽依」

「は、はい?」

「この問題はな、この公式を代入すればとけるで?」

「へ?」

先輩は、私の手元にプリントを戻す。

するとプリントの端の方に、公式がつらつらと書かれていた。


いつのまにこんな公式を…。

プリントと先輩を交互に見る。


「ほら?解いてみて」