私ひまわり、あなたは花屋


 彼の言葉が理解できず、

「へぇ?」

 と、気の抜けた“音”を喉から出す私。

「ひまわりってのはすっげえデカい花、みたいに思われがちだけど。あれ、実は小さな花の集まりだぞ?」

 悪戯っぽい笑みを浮かべて話す彼。

 不覚にもその笑みに一瞬どきり、としてしまう。

「頭状花序(とうじょうかじょ)っていってな。外側の黄色い花が舌状花(ぜつじょうか)で内側のおしべとかめしべに思われがちなところは花びらがない筒状花(つつじょうか)」

 彼の話によるとたんぽぽなんかも同じ頭状花序、複数の花が集まって出来ているらしく、キク科の植物にみられる特徴なのだそうな。

 って、ひまわりってキク科だったんだ。

 ひまわりはヒマワリ科かと思ってた。

「アンタ、ひまわりはヒマワリ科だと思ってただろ」

「う。そ、そんなの普通知らないわよぅ!」

「ちなみに桜はバラ科だぞ?」

「えっ!? 嘘!」

「花屋が植物のことで嘘ついてどうすんだよ」

 そ、そうかもしれないけど。

「つか。俺、ひまわり好きだぜ?」

「へっ?」

 な、なんでこのタイミングでこ、告白?

 ちょ、ちょ、ちょっと待ってよ。

 なんの心の準備もしてないときにそういうのは、

「ひまわりってさ、なんか人間みたいだろ?」

 はい?

 ていうか、私は人間ですけど……

「太陽っていうきらきらしてるもんに憧れてめいっぱい背伸びしたり、暗くなると肩を落としてうなだれたり」

 あ、ひまわりって向日葵の方のことか。

「で、自分だけじゃ“ひまわり”っていうひとつの存在を保てない。それって人間社会と一緒だろ?」

「あ~。うん。そういわれてみればそうかも……」