「はぁ……大体、私嫌いなのよ。ひまわり」
こういうといつも他人には珍しがられてしまう。
案の定彼も、
「そうなのか?」
軽く眉を上げて聞き返してきた。
「ひまわりって、やたら大きいじゃない」
「……妬み?」
「違うわよ。いや、まあ、違わないのかもしれないけれど。なんかこう、威圧感があって嫌いなのよ」
小さい頃、よく遊んでいた公園から家へ帰る途中にひまわり畑があって。
そこの大きな大きなひまわりたちが夕暮れ時、どんよりと首をもたげて何本も何本もこちらを見下ろしてくる姿が子供の私にとってはとてつもなく怖くて。
夏の日はそこを避けて帰っていたくらいだった。
「昼間は昼間でなんかおっきな身体で他の花たちに影作って、自分は威張りくさってるみたいで」
自分はそう思うのに、皆は「おっきくてすごいね!」とか「きれいだね!」とかいってて。
それがまたたまらなく嫌で、以来どうにもひまわりが嫌いでしかたない。
「しかも最近はそれに益々拍車がかかっちゃって……」
「なんでまた」
原因は今の会社だ。
たまに、他人にニックネームというか、あだ名をつけたがる人っているでしょう?
ひまわり嫌いを公言すると周りから変に見られてしまうからいわずにいたら、なんと、
「会社での今のあだ名。まさかの“ひまわり”なのよ!」
「それはまた」
「うるさい! 名前よ。もともとの私の名前。『日向葵(ひなたあおい)』って名前なの、私」
「あ~なるほど、ね」
つまり“ひまわり”は漢字で“向日葵”。
日に向かうか向かう日かの違いだけで似てるからっていう理由。
「これってもう、イジメの域に達してると思わない?」
だんっ! と思わずテーブルを叩く。
けれどそんな熱くなる私をよそに、彼はゆったりとした動作で空になっていた私のカップにハーブティを注ぎ、
「そうか? 俺はお似合いだと思うけどな」
なんてことをいった。
「なっ……」
どうしてほぼ初対面の人間にこんな馬鹿にされないといけないのか。
カッ、と頭に血がのぼ──


