私ひまわり、あなたは花屋


「で?」

「え?」

「アンタ誰?」

 今さらその質問ですか。

 お茶まで出しておきながら。

 いや、お茶はもうこの辺りの風習なんだろうか。

「昨日のあれ。おいくらですか?」

 なんだか疲れてきた私はちょっと語尾に角を立てつつ口にする。

 すると彼はしばらく考え込んだ後、

「…………」

 しばらく考え込んだ後、

「…………」

 しばらく──って、ホントに忘れちゃってるよこの人。

「昨日の夜! そこの駅で、私にひまわりのアレンジメント“押し付けて”いったでしょ!!」

「……あぁっ!」

 やっと思い出したか──

「去年中学に上がった八百屋さんとこの──」

「ちっがうわぁぁぁ!! これをみなさい! 免許証!! 大人です成人です来年には四捨五入したら三十路です──って何をいわせるのよぉぉぉぉぉ!!」

「うっそ。俺より年上なんだ」

「あなたがおっきすぎるの!」

 何の話よ……まったく。

「あぁ思い出した。あれか。昨日の夜そこの駅でひまわりのアレンジメントくれてやった──」

 どうして同じ言葉で違う記憶の引き出しが開くのよ。

 私自慢じゃないけど日本語しか喋れないわよ。

 それとも何?

 この人の耳は他の人より特殊なんだろうか?

「で? その人が何の用?」

「だ・か・ら。あれの代金を払いにきたの! 見ず知らずの人にあんなものタダでもらうわけにはいかないでしょう」

「なんで?」

「は!? なんで、って。あたり前じゃない!」

「そうか? 単純に「やったね。ラッキー」くらいに思ってればいいじゃん」

「大人として、社会人して、そういうわけにはいかないの!」

「ふぅん? めんどくせえな」

 な……

 はぁ。

 お肉屋のおじさんが“がんばれ”といった理由がよ~っくわかったわ……