颯先輩は親分に運ばれて、今は自分のベッドで寝てる。
コバさんが颯先輩のおでこに冷却シートを貼るのをあたしは隣で見ていた。
親分は颯先輩をベッドまで運ぶと、コバさんに「あとは頼む」と言って厨房に戻って行った。
「熱が高いわね。明日になっても下がらなかったらお医者様に診てもらいましょう」
コバさんがそう言うと、颯先輩はうっすら目を開けた。
「もう…、帰れ…」
颯先輩は苦しそうに言葉を発する。
「いいのよ。こんな状態で帰れないわよ」
時計を見るとコバさんの仕事の時間はとっくに過ぎてた。
「コバさん!あとはあたしが看病します!」
「……るせェ」
「あ、ごめんなさい」
病人の前だってことを一瞬忘れて、大声を出してしまった。
あたしは慌てて口を押さえる。
「潤ちゃん、でもねェ…」
「大丈夫ですよ。看病くらいあたしにだって出来ます。コバさんは帰って夕飯作らないと」
「そうなんだけど…」
「…いいから、…帰れよ」
「任せてください」
「…うーん、そうね。じゃあお願いしようかしらね」
コバさんなんとも名残惜しそうに颯先輩の部屋を出て行った。


