「駿河さん!颯先輩が倒れた!」
「あ?何だって!?」
親分は大根を切っていた手を止めた。
“厨房に入るべからず”をこんな時でも守るあたしは入り口から再度叫ぶ。
「颯先輩が玄関の前で倒れてるんです!助けてください!」
「そりゃ大変だ!今行く!」
親分は包丁をカランっと置き、手をさっと洗うとエプロンで拭きながら厨房から出てきた。
「玄関前だな?」
「はい!苦しそうに倒れてて―――」
「わかった。とりあえず落ち着け」
そう言った親分はあたしの頭に手を乗せた。
あたしは自分でも気付かないくらいに取り乱してたみたいだ。
「駿河さん…」
「びっくりしたな?俺が行くからもう大丈夫だ」
「はい」
「嬢ちゃんはコバちゃん呼んでこいな。颯は俺が部屋まで連れてくから」
「わかりました」
まだ心臓がドキドキいってる。
突然倒れるからびっくりした。
颯先輩、どうしちゃったの……?


