廊下を歩いていたのは颯先輩だった。
颯先輩はあたしに気づき、怪訝な顔をする。
えーっと。どうしよう。
声掛けた方がいいのかな?
颯先輩とは普段からそんなに話さないから、こういう時に困る。
「えっと、どうかしたんですか?」
「何が?」
颯先輩はいわゆる“不良”。
その金髪がいかにもって感じ。
大河さんの元ヤンと違って、颯先輩は現役だから今も雰囲気は刺々しい。
だからかな。
……若干苦手だ。
「あ、いや。この時間に家にいるなんて珍しいなァと思って」
「悪いかよ」
「全然!そんなことないです!」
「……」
「……」
そこで会話が途切れた。
どうすりゃいいんだ。
颯先輩はあたしを見つめて動かない。
「…な、何ですか?」
「変な詮索すんじゃねェ」
「あ、ごめんなさい…」
詮索した訳じゃないのに…。
ちょっと話し掛けただけなのに…。