くるりと振り向いた大河さんは怖い顔―――というかなんというか、影のある顔とでも言うのか。
でも確実にいつもの爽やかな優しさが感じられない、そんな顔だった。
「そんなに震えて、怖かった?」
「……」
「怖いに決まってるよね。あんなに大勢の女子に囲まれたんだから」
「……」
…なに?
なにが言いたいの?
大河さん、怖いよ。
「でもそんなの分かってたことだよね?1人でここに来るのが危ないことだって分かってたことだよね?ねえ、潤ちゃん」
「……はい」
大河さんはあたしを倉庫に背中がくっつく程に追いやる。
あたしの背中に冷たい倉庫の壁がくっついたのとほぼ同じタイミングで、大河さんはあたしの顔の横に手をついた。
大河さんの綺麗な顔があたしの顔の数センチ手前にある。
目を細めてあたしを見つめる大河さんが、次に何を言うのかと思うと怖かった。
「頭使えって言ってんだよ」
大河さんは今までで一番低い声であたしを脅した。


