それからまた団体は動き出した。
「大河さんって今はああだけど昔は違ったんだぜ」
「へ?」
地図はまたあたしに戻ってきた。
どうやら豪くんは地図を見ながら歩くのが面倒臭くなった様子だ。
“今はああ”ってなに?
今はどうなんだろう?
あたしは今の、この数週間の大河さんしか知らないから、“今”とか“昔”とか分からない。
「あの人、元ヤンなんだよ」
「「え!!?」」
驚いた声は見事に未玖と重なった。
「元ヤン!?」
「そう。昔はすっげー尖ってた。今からは想像も出来ねェよ」
大河さんが元ヤン!?
うっそ!
あんなに優しくて穏やかなのに。
「え、でも大学とかちゃんと出てんでしょ?」
未玖があたしの右側から顔を出して言う。
「高校までらしいよ。やんちゃしてたの」
豪くんがあたしの左側から呑気に言った。
それにしたって大河さんがヤンキーな姿は全然想像出来ない。


