「あ、豪くん」
「あんた何しに来たの?」
豪くんはあたしの手から地図をヒョイッと奪い取る。
「だって全然海里に近づけねェんだもん。俺の事誰もかまってくんねェの」
「お気の毒様」
未玖が豪くんに向かって両手を合わせる。
「こらこら。拝むな!」
豪くんは未玖に“しっしっ!”と手で払った。
「豪くんも大変なんだね」
海里くんの友達やるのも大変だ。
「まあ、こんなん慣れてるけどね」
「そうなんだ」
「本当に大変なのは海里の方」
「あれのどこが大変なの?チヤホヤされちゃっていいご身分じゃない」
未玖は眉間にシワを寄せて、後ろの様子を窺った。
そこには相変わらず女の子に囲まれた海里くん。
「いや、これ言っていいのか分かんねェんだけど」
豪くんは小声でそう言うとあたし達に手招きをした。


