怖い。

樹さんが発した一言に、あたしは瞬時にそう思った。


「お前は誰だ」

「あ、あたし……」


そう言った自分の声は思ったよりも小さくて、相手に聞こえなかったんじゃないかと思う程小さかった。

だけど樹さんにはちゃんと聞こえていたらしい。


「女か」


樹さんもあたしの事がよく見えてないようで、あたしの声を聞いてそう言ったんだと思う。


「…は、はい」

「誰の」

「……え?」


“誰の”ってどういう事?


「誰の女かって訊いてんだよ」

「あ…、いや、あたし――…」

「誰の女だろうと関係ねぇけど」


あたしはここに居候させてもらってる事を説明しようとした。

だけど樹さんの言葉で遮断される。

自分で訊いてきたくせに、初めから聞く気がなかったかのように。