びっくりした。
隣の人が急に喋り出すからびっくりした。
そんなあたしの視線に気付いた隣の彼は「ども」っと言ってちょこんと頭を下げる。
だからあたしも慌てて頭を下げた。
「えー、あと新卒じゃないね。浪人はしてないから。まぁ、この学校で働く前に違う学校ってのを経験しときたくて数年、前の学校で働いてからうちの学校に来たって感じかな」
「彼女いるのー?」
「しつこいね、君も」
二度目の同じ質問に大河さんは若干苦笑い。
「いいじゃん!教えてー」
ちょっと派手目のその子はなかなか食い下がらない。
「いいけど…。彼女はァ、いません」
「じゃああたしがなってあげるー!」
「何言ってんの」
「本気なのにー!」
「あー、はいはい」
こういう対応もきっと慣れてるんだろうな。
大河さんはその子をさらっと受け流した。


