彼の足は、思いの外(ほか)速くて… 途中で姿を見失ってしまった。 辺りは真っ暗。 いつかの夢を思い出し、不安が過ぎる。 その場に蹲(うずくま)り、零れ落ちそうになる涙を袖でぐっと拭った。 その時…… 黒く厚い雲から白い月が現れ、一本の道を照らし出す。 まるで道しるべのよう。 『行きなさい』 何故か月がそう言ってる気がして、照らされた道を進んだ。