あたしは生まれながらにして、左手の薬指と小指がない。 母は、この事をいつも気にしていて、あたしの記憶が残っている一番昔から、常にあたしに手袋を履かせていた。 そして、いつもあたしに“ごめんね”と謝ってきた。 その頃は、母が何で謝るのか、何で時に泣きそうになるのかが、理解出来なかった。 平穏な日常を送っていたはずだった。 あの日までは……