「大丈夫か?2人とも病院やな」



兄貴を立たせながら言う彼。

私はさっきとは違い、痛みが不思議なほどに引いていた。

倉庫前に止められていた車に乗り込み、病院へと向かう。



「………で?」



「え?」



「病院、着いたで?」



「あ、うん」



自覚なしにボーッとしてたのだろうか。

彼の声にも景色の変化にも、気付かなかった。



「憂愛?」



兄貴が傷だらけの顔で私を覗き込んで来る。



「何か聴こえたか?」



「何が?」



私は知らなかった。

兄貴が私にわからないように、左耳の横で指パッチンをしてた事に。