人の笑顔に、安心感が胸に広がり、涙がグッと込み上げた。

口元を手で押さえ、沈む夕陽を見つめて涙を堪えた。



「…ちょっと寄り道な」



彼は右に出したウインカーを左に変えた。

運転席の所にあるボタンで開かれた窓。

日中とは違う涼やかな風が涙腺を刺激し、ポロリと涙が溢れる。

今まで無縁だと思ってたモノが、私の頬を伝ってる。



「憂愛。前、見てみ?」



「……え?」



「騙されてくれて、ありがとーな?」



ふと顔を上げたら、目の前は薬局。

感動するとか、驚く場所ではない。

でも、私の涙は、高瀬紀斗の指で拭われた。