「悪いけど、そんなお金持ってない」



「あ?」



「持ってないから。毎月、何万も竜哉兄にお金を返してる私の身にもなってよ」



「何だと?」



「殴りたければ殴れば良い。
傷害罪で訴えて捕まえて貰う」



兄貴が逮捕されて、開放されたら、私は幸せなわけで。

竜哉兄にも迷惑を掛けなくて済む。



「チッ……」



兄貴は舌打ちをして、私の横を通り過ぎる。



「ちょい待ちや」



すると、黙って煙草を吸っていた高瀬紀斗が、兄貴を止めた。

ウザそうに彼を見る兄貴。

欠伸をしながら、兄貴を見る彼。

表に立つ警察官は、兄貴が暴れないか見張ってる。