「でもね、あの鬼最後切なそうな顔をしていたの。」

そうあの表情。
切なげにこちらをみてきた顔が今も忘れられない。

「切なそうに?」

刹那は少し怪訝な顔をしている。

「うん。だから私あの鬼にもう1度逢って見たい。」

理由を知りたい。

「おぬし本気か?」

刹那が驚いた顔をしている。

「本気だよ。だってほっとけないよ。」

たとえ鬼でもなんだかほっとけない。
そういう思い出言葉を発すると刹那は少し怒った表情になった。

「おぬしが優しいのは知っておる。じゃがあやつは鬼じゃぞ?それにおぬしさっき攫われそうになったではないか。」

「そうだけど・・・。」

私は口ごもる。
確かに刹那が来てくれなかったら私は攫われていた。
だけどね。
鬼とか人間とかじゃなくてあの人きっとなにか心に抱えている。
それがあまりにも深い悲しみに包まれているような気がするから気になっているのかもしれない。

「ならばさっきあのまま攫われても良かったと思っておるのか?」

刹那が苛立たしげに言葉を発する。