桜の木の前で

彼の優しい胸に抱かれ段々と落着いて来た。

するとまた彼が呟き始めた。

「俺がいなくなったら別の誰かと一緒の道を歩めよ。」

「な、何を言っているの?」

私は驚いて顔を上げる。

彼は寂しそうに微笑んだ。

「俺は傍にいれない。だから・・・」

「やめて!」

私は言葉の途中で叫んだ。

そんな私を彼は困ったように、いとおしそうに見つめる。

「私、あなた以外とは結ばれるつもりはないわ。」

「桔梗・・・・」

「ここだけは譲れないんだから。」

そういって精一杯微笑む。